子宮頸がんの予防ワクチン

子宮頸がんの予防ワクチン

2013年06月18日(火)9:16 PM
  4月から予防接種法の対象になった子宮頸がんの予防ワクチンは、6月から積極的に勧奨しないと厚生労働省が発表しました。
 要するに、子宮頸がんの予防接種は効果はありそうだけど副作用が多いから希望者だけどうぞ、ということです。自分で判断するためには、メリットとリスクを理解したいです。
 →(厚生労働省の資料) ①リーフレット②勧告
 
小松菜の若芽 メリットは子宮頸がんの予防効果が期待できる(※1)ことです。また、このワクチンは性行為の未経験者が9年以内に経験をする場合に有効なことがあるワクチン(※2)です。性行為の経験者はかえってウイルスを増やすことになるので接種はメリットではありません。
 子宮頸がんの多くの方がヒトパピローマウイルス(HPV)(※3)に感染しているので、HPVの感染を防げたら子宮頸がんが減るのではないか、HPV感染者が少ない先進国はHPV感染が多い国に比べて子宮頸がんになる人が少ない、製薬会社の調査でも効果があったなどの理由で、WHOが予防ワクチンを推奨しています。
 ※1予防効果は証明されていません。
 ※2子宮頸がんの原因と思われるウイルスの65%に有効なワクチンです。
 ※3ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんの原因ではないかと言われています。
 
 デメリットは副作用が多いことです。10万人が子宮頸がんの予防接種を3回すると70人に副作用があります。重症な副作用はその内の12人です。他の予防接種の2~33倍リスクが高いようです。
 予防ワクチンはサーバリックスとガーダシルの2種類あり、効果が持続する年数と対応するウイルスの数に違いがありますが、どちらも副作用のリスクは高いです。
 →(厚生労働省の資料)
 
 HPVは多くの女性が感染したことのある、ありふれたウイルスで90%くらいは自然治癒します。予防ワクチンはそれ以外の方について、子宮頸がんの原因と証明されていないウイルスの65%に有効かもしれない、というものです。

 
 また、子宮頸がん発症のリスクを低くする可能性があるのは予防接種ですが、子宮頸がんによる死亡リスクを減らす方法もあります。それは検診です。早期発見の治療率は80%です。現在24%しかない定期検診率が上がれば死亡率が下がることになります。
 
 予防接種には必ずリスクがあります。でもリスクを上回るメリットがあるから意義があると思います。自分だったらどうするか、自分の子にどうしてあげればいいのか、これは難しい問題ですが、今回の発表によると個人の判断に任せられました。

 
 
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   参   考
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人口10万人あたり子宮頸がんの発症11人、死亡3人、予防ワクチンの副作用70人
【子宮頸がん】
 子宮と膣が繋がる部分を子宮頸といい、そこのがんを子宮頸がんといいます。近くにある直腸や膀胱、骨盤内のリンパにのって全身に転移したりします。
 子宮頸がんの患者さんは約1万人いて、年間の死亡者は約3千人です。日本の死亡者数は約125万人なので全体の0.24%が子宮頸がんで死亡していることになります。
 40、50代に最も多い病気ですが、20代の人や80歳以上の人にもみられ、20~30代の患者さんが増えています。子宮頸がんの自覚症状で一番多いのは不正出血です。
 早期発見による治療率は80%なので、24%しかない定期検診率が上がれば死亡率が下がります。
 
【HPV】 ヒトパピローマウイルス
 子宮頸がんの90%以上にヒトパピローマウイルス(HPV)の感染があったり、感染率の低い先進国の方が感染率の高い国より子宮頸がんになる率が低かったり、製薬会社の提出した実験で有効性が認められたなどにより、WHOは予防ワクチンで子宮頸がんを予防できると考えて各国に推奨しました。
 ただし、子宮頸がんのワクチン接種による予防効果は証明されてない、と①リーフレットに書いてあります。例えば胃癌患者に胃潰瘍が多いため胃潰瘍だから胃癌になると言われた時期がありましたが、現在は胃癌になるから胃潰瘍ができると言われているということもありました。証明されてはいませんが効果がありそうと判断したWHOが世界に推奨し、日本も予防ワクチンを制度化しました。
 HPVは100種類以上あるウイルス一族の総称で、性交渉のある女性の50~70%が感染するごくありふれたウイルスです。感染しても90%以上は自然に治ります。 発がん性はHPV-16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68,73,82の15種類にあり、感染から数年~数十年で感染者の0.1~0.3%が子宮頸がんになると言われています。
 
【予防ワクチン】 (厚生労働省の資料)⑧HPVワクチンの有効性
 予防ワクチンは子宮頸がんの65%を占めるHPV16,18型のウイルスの殻を半年間に3回接種します。すでに感染している人には効果がないうえ増殖の可能性もあるため、性交渉前の女性に有効です。そして最長で9年くらい効果が持続するそうです。また、日本ではHPVは子宮頸がん予防のみ承認されていますが、男性の肛門がんなどの原因にもなるため海外では男性も承認されています。今後は男性も対象になる可能性があるので、女性だけの問題ではありません。
 日本で承認されているのはサーバリックスとガーダシルです。2つの違いは、予防できるウイルスの違いと有効期間です。予防できるウイルスは、ガーダシルの方が多いです。予防できる期間はサーバリックスが最長9年、ガーダシルが最長6年まで確認されています。ただし、サーバリックスは、ガーダシルに比べて副作用報告が多いです。
 
【副作用(副反応)】
 予防接種法施行規則によればHPV予防ワクチン接種により考えられる副作用に、30分~失神などの血管迷走神経反射、4時間~アナフィラキシー、28日~急性散在性脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、血小板減少性紫斑病、その他とあります。そして今回「積極的に勧奨しない」ことになった理由がここにあります。厚生労働省曰く「ワクチンとの関係が否定できない症状」つまり副作用の頻度も重度の副作用も想定より多いからです。
 
名称  副作用  うち、重篤
子宮頸がん予防ワクチン(サーバリックス) 245.1 43.3
子宮頸がん予防ワクチン(ガーダシル) 155.7 33.2
小児用肺炎球菌ワクチン 89.1 27.5
日本脳炎ワクチン 67.4 25.7
ヒブワクチン(インフルエンザ菌b型) 63.8 22.4
不活化ポリオワクチン 23.8 5.3
4種混合ワクチン 13.5 3.6
インフルエンザワクチン 7.5 2.3



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