2020年07月28日(火)6:07 AM
「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。」古典の授業で目にした事があるのではないかと思います。奥の細道(松尾芭蕉)の序文の書き出しです。更にこの後、旅する準備の一つに「三里に灸すゆる」とあります。ここで言う三里とは足三里という膝の下にあるツボの名前です。芭蕉は150日掛けて2400km近く歩いたそうです。その何倍もの距離を(延べ17年間、トータルで約4万キロ)日本全国歩いて測量し地図を作成した伊能忠敬も足三里に灸をすえたのでしょうか?
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休息、栄養、運動を過不足なく生活する事等を説いた江戸時代の医者・薬学者であった貝原益軒の「養生訓」の中にも「毎日足三里に灸をすると、はやりやまい、中風、のぼせ、鼻血、目の病気、胃の不調、食欲不振などが防げるよ(超意訳です)」と足三里の効能が書かれています。
最近、北里大学東洋医学総合研究所の広報誌
「漢方と鍼/2020年7月号」にお灸の名穴として足三里が紹介されていました。足三里への灸は胃もたれや食欲不振など消化器疾患に効果的な事や、灸自体が免疫に関わる白血球を増加させる効果を持つ事が紹介されています。また自ら足三里の灸を実践し、100歳を超えても臨床を続け、お灸博士と呼ばれた医師原志免太郎の著書から「
ばい菌は天地間に瀰漫(びまん:はびこる事)
して居るのだから、所詮逃れ切ることは、金輪際不可能である。…(中略)…大切なことは如何なるばい菌にも打ち勝つだけの体力を造って置くこと…」と引用されています。
この原志免太郎の研究を踏まえて
薬剤耐性のある結核やエイズとの重複感染にお灸を足す事で治療効率を高めている国があります。足三里はやっぱりすごいツボですね。
名穴は足三里に限ったものではありません。
合谷(首肩こり・頭痛・歯痛)、
至陰(逆子)、
三陰交(婦人病)、
労宮(精神疲労・不安)、
失眠(不眠)、
湧泉(冷え)等一杯あります。
とは言え、ツボを症状と1対1で選ぶ事はあまりないです。ツボは症状・体質・体調・ツボの性質などを合わせて選びます。例えば、胃の不調には決まって足三里を使うわけではありません。胃酸が出過ぎる体質の方の場合は足三里の後ろ斜め上の陽陵泉を使います。あるいは頭痛には決まって合谷かというと、首肩こりから来る頭痛なら合谷を使う事もあるでしょうが、むち打ちが原因の頭痛であれば怪我の処置をする必要があります。
更にもっと根本的な事は、東洋医学の場合病気そのものも診ますが、病気になったおおもとの原因を診ようとします。例えば胆石が出来たとします。胆石は手術で取る事は出来ます。けれど多くの場合また出来てしまうでしょう。東洋医学ではその人は胆石の出来易い状態なので、体全体がよくなるようにしようとします。そして生活習慣の改善も提案します。
名穴は古来から連綿と使われて来た効果の高いツボなので、
鍼灸師と相談して良く合うツボを選んで下さい。
東洋医学には未病治(病気になってしまう前に治す)という考え方があります。養生の一貫として定期的に鍼灸治療を受けるのは健康を維持する良い方法だと思います。そしてお家で未病治を実践するならお
きゅう(灸)がぴったりです。お
きゅう(灸)の事なら色々お手伝いさせて頂ける事もあると思いますので、是非お近くの
はりきゅう(鍼灸)院に
おきらくにお問い合わせください。
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